新朝ドラ『おちょやん』主演の杉咲花 「身体に染み込ませる」役作りの努力

NHK連続テレビ小説『おちょやん』が、11月30日より放送スタートした。ヒロイン・竹井千代役を演じるのは杉咲花(23)。ヒロインのモデルとなった浪花千栄子は、奉公などで苦労を重ねた末に、40歳で女優として遅咲きの花を咲かせ、「大阪のお母さん」として親しまれた昭和の名女優だ。温かみのある美しい大阪弁を話すことで知られる存在であるだけに、東京出身の杉咲にとっては、なかなかハードルの高い役どころになるかと思われたが、放送が始まってみると、杉咲の自然な言葉遣いが絶賛されている。
【写真】20歳のころの杉咲花。白いシャツで笑顔が眩しい!
 杉咲が朝ドラに出演するのは、2016年度上期に放送された『とと姉ちゃん』以来、約4年ぶり。ようやく掴んだ朝ドラヒロインという大役に懸ける情熱はかなりのもののようだ。番組公式サイトに掲載されたインタビューの中で、杉咲は、なんと撮影が始まる10か月以上も前から、大阪に毎週通って方言を勉強したことを明かしている。
 今年23歳になったばかりの杉咲は、実力派として定評がある。2013年に放送された『夜行観覧車』(TBS系)での演技を覚えている人も多いことだろう。同ドラマにおいて杉咲は、「家庭内では暴力を振るう一方、学校ではいじめられている少女」という難役を熱演した。
 2016年公開の映画『湯を沸かすほどの熱い愛』では、主人公の娘役を演じ、「第 40回日本アカデミー賞」の最優秀助演女優賞をはじめ、いくつもの映画賞を受賞。昨年放送されたNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』での演技も好評で、骨太な作品にこそマッチする女優と言えるかもしれない。
 杉咲のインタビュー企画を多数担当してきた映画ライターの磯部正和氏は、その印象をこう語る。
「『湯を沸かすほど~』の中野量太監督は、杉咲さんを『非常に感度の高い女優』と称していましたが、杉咲さんは役に対して、すごく丁寧にアプローチする印象があります。
 例えば『愛を積む人』では、長期のロケで役を染み込ませる時間があったことに感謝していましたし、『湯を沸かすほど~』や、初の朝ドラ出演となった『とと姉ちゃん』でも、クランクイン前から、キャストたちと連絡先を交換し、役の関係性をじっくりと構築していく作業をしていたそうです。セリフだけではなく、身体全体に役を染み込ませることにより、どんな役でも浮いた感じがしません。
 一方で、近年は軽やかさも感じられるようになってきました。その変化について、2019年に公開された映画『楽園』のインタビューで、いままでのように全身全霊で向き合うと精神的な負担が大きくなってしまう役柄のため、撮影中でもオンとオフを切り替えるアプローチ方法を試みたと話していた。
『楽園』の撮影は2018年の8月から11月ぐらいに行われていましたが、その年の年末には『ガキ使』大晦日スペシャルや『芸能人格付けチェック』などのバラエティ特番にも出演し、非常にコミカルな一面を見せました。
 杉咲さんは、『自分自身に先入観を持たないようにしている』と話していました。重々しい役から軽やかな役までレンジを広げ、柔軟性を兼ね備えたいまだからこそ、朝ドラの主人公という長丁場でも、きっと飽きさせない魅力的なキャラクターを作り上げてくれると思います」
 役にじっくり向き合う一方で、“軽やかさ”も身に着けた杉咲にとって、朝ドラという長丁場で喜劇女優を演じるのは、これまでの集大成と言える仕事になるのではないだろうか。『おちょやん』を経て、また女優として大きく成長するはずだ。
●取材・文/原田イチボ(HEW)

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